若干痛いネタ 微ヤンデレロロとルル死にネタ
大丈夫な方はどうぞ



手術をした。なんの手術かは分からなかったが、兄さんが手術しようと言ったのでそれに嫌だと言いたくなかった。僕がいいよというと兄さんが微笑んで、それを見て僕も嬉しかったから手術の1つや2つなんでもよかった。けど手術内容が分からないのは怖かったし、手術をするのがラクシャータだというから死んでしまうかもという不安が少しあった。全身麻酔の注射を打つとき、兄さんがそばにいてくれた。何も心配しなくていいから、寝てるだけいいからと言った兄さんの言葉を聞いて僕は眠りに落ちた。それから3日間、僕は眠っていたらしい。起きた時には当然手術は終わっていて、というか手術自体は2時間程度で終わったらしい。ただ麻酔が効きすぎたらしく、そのせいで3日も寝ていたそうだ。目が覚めたとき、てっきり黒の騎士団の病室かと思ったら僕はゼロの私室・・・兄さんの私室に寝かされていた。兄さんのベッドに寝ていて、腕には点滴の針が刺さっていた。麻酔のせいで身体がうまく動かなくて、目だけで周りをみたら机に向ってパソコンを打っていた兄さんと目が合った。

「起きたのか、気分はどうだ?」
「・・・ぁ・・・に、い・・・さ・・・」
「麻酔がまだ抜けてないんだな、すぐにラクシャータを呼ぶから待ってろ」

僕の頭を撫でて、ゼロの仮面をかぶると兄さんは部屋を出て行ってしまった。本当は近くにいてほしかったけどうまく喋れなくて止めることができなかった。部屋にはC.C.も居て、C.C.は兄さんの背中を悲しそうな眼で見たあと僕を見た。C.C.は兄さんの共犯者だから部屋に居てもおかしくないけど、やっぱりちょっと嫉妬する。C.C.が立ちあがって僕の近くに来ると動けない僕の耳元に顔を近づけると小声で囁く。

「これからギアスは使わないようにしろよ、さもないと       」

言葉の続きは部屋の扉が開く音で掻き消されてしまった。聞き返したかったけどC.C.は兄さんと入れ違いに部屋を出て行ってしまった、なんだったんだろう。ギアスを使うなってどういう意味なんだろう、暴走を心配しているんだろうか。でもC.C.が僕の心配するのは変だなぁ、そう思いながら僕はラクシャータの診察を受けた。身体を起こされて、胸に聴診器を当てられる。僕の身体は兄さんが支えてくれた。

「うぅん、特に問題はないみたいねェ」
「分かった、ありがとう」
「でも一応血液検査だけはしておくわァ、血液に変な反応出ても困るしね」
「ああ。あと痺れが残っているというんだが、どれくらいで消える?」
「今日一日休んでれば取れると思うけど、医学専門じゃないから分からないわァ」

大丈夫なんだろうかと僕も兄さんも不安そうにラクシャータを見たけど、ラクシャータは煙を吹かすだけだった。でも医学も少しは学んでいたと言っていたし、きっと大丈夫だろう。ラクシャータが帰ると、兄さんはそれからずっと僕といてくれた。数時間もすると点滴が抜け身体の痺れも少なくなり、自分の口で食事を取れるようになった。兄さんは一口一口僕の口に食事を運んでくれて、まるで新婚さんみたいだねというと頬を染めていた。食事をしたあとは兄さんと少しお喋りして、同じベッドで寝た。C.C.は結局帰ってこないみたいで兄さんが部屋にロックをかけているのを見て、これで誰にも邪魔されないと喜んだ。隣に兄さんの体温を感じて、とってもドキドキする。やさしい兄さん、僕の兄さん、僕だけの兄さん。まだ両手足は痺れが残っててうまく動かない、麻酔が抜けて動けるようになったら、兄さんを抱きしめたい。抱き締めてキスして抱きたい。すぐそこにいるのに自分で触ることができないなんて生き地獄だよ。眠る兄さんに触れたくて、頑張って右手を持ち上げた。手首から先の感覚がなくて、掌がぶらんと力なく揺れる。兄さんが起きないようにそっと髪を撫でる。髪の感触さえ感じられなかったが、それでもいい。

「兄さん、好き」

目を覚ますとすっかり身体の痺れは無くなっていた。隣を見ると兄さんはまだ寝ているようで、薄暗い部屋の中で兄さんの肌の白さが目立っていた。ベッドを揺らさないように身体を起こす。腕を回したりして身体を解す、特に違和感はない。身体が復活したのをいいことに僕はゆっくりと兄さんの上に跨った。ギシリと軋むベッドの音がやけに大きく聞こえる。膝立ちする様に兄さんの身体を跨ぐと、横向きだった兄さんの身体が仰向けに寝返る。くんと上がった顎を掴むと唇を合わせた。うっすらと開いていた兄さんの唇へ舌を捻じ込ませる。

「ん、むぅ・・・っ・・・?・・・んっ!・・・あっ」

寝ているから、と遠慮なく口内を味わっていたら兄さんが起きてしまったようだ。目を見開いて驚いた兄さんと目が合う。目だけで笑い、唇を離した。

「兄さん、おはよう」
「っ・・・ロ、ロ・・・お前、もう平気なのか?」
「うん、大丈夫だよ」
「ならよかった」

ふわりと笑って兄さんが僕の頭を撫でる。兄さんは僕の頭を撫でるのが好きだ。僕も撫でられるのは好きだけど、やっぱり年下扱いされてるんだなぁって感じてちょっとだけ悔しい。僕はまた兄さんの唇に食らいつくと、兄さんの服のボタンを一つずつ外した。ぷちぷちとボタンを外す僕の手を兄さんが掴むけど、本気の抵抗じゃない。ボタンを全部外すと兄さんの肌をさわさわと撫でた。ちょっと寝汗をかいてるけど、そこもまたいいって思っちゃうのは兄さんだからかな。

「ね、兄さん。身体ちゃんと動くかテストしたいな」
「でも、時間が・・・」
「まだ大丈夫だよ、すぐ済ませるから、ね?」

お願いするように言うと、兄さんはしょうがないなと言って笑った。僕がお願いしたらダメって言えないんだよね、そう分かっててお願いする僕って卑怯?卑怯でもいいんだ、兄さんを抱けるなら。兄さんと繋がれるなら。可愛い兄さん。ゼロという仮面をかぶる兄さんを"ルルーシュ"というただの人間として抱ける僕は幸せものだ。誰にも渡さない、兄さんは僕のものなんだ。僕だけが兄さんの兄弟で、弟で、大切な存在なんだ。僕は兄さん以外いらないよ、兄さんはどうなの?怖くて聞けないよ。だって兄さんはいろんな人に求められる存在なんだもの。ゼロとして遠くへ行ってしまう兄さんを僕は引き留めることはない。だって僕の所に帰ってくるって分かってるんだから、ちょっとくらい離れてもいいよ。束縛はしたくないもの。ああ、でも、僕以外の人間に触られたりなんかしたら僕その人のこと殺しちゃうかもしれない。兄さんの皮膚に、他人の細胞が触れたって考えるだけで腸が煮えくり返そう。兄さんは僕を愛してる、僕も兄さんを愛してる。それだけでいいのにね。僕は着ていたパジャマの上着を脱ぎ捨てた。



ぐったりとベッドに横たわる兄さんを横目に、僕は汚れてしまったシーツを引っ張った。大量に使ったティッシュもまとめてゴミ箱に入れておく。兄さんの中に出したものの処理はしたから、あとはシーツを洗うだけだ。軽い兄さんの下からシーツだけを取ると、畳むためにベッドから降りた。一瞬だけふらついたが、久しぶりに立ったせいだろう。大きいシーツを畳むのに四苦八苦していると、開きっぱなしだったクローゼットについている鏡に目が行った。

(手術の跡残ってる・・・心臓の部分だ・・・)

僕の心臓の部分に手術の跡が見えた。20センチくらいのメスの跡。まだ縫い糸はついてるけどもう傷は塞がっている。一体どんな手術をしたのだろうと疑問に思っていると、鏡に映る僕の後ろで兄さんが起き上がるのが見えた。

「ロロ、もうギアスは使うな。ヴィンセントだけでもお前は十分強いから。」
「うん、分かったよ。・・・兄さん、僕、手術ってなんの手術をしたの?」
「・・・それは、今は言えないんだ。ごめん」

兄さんが俯いて呟く。今は言えないってことは、いつかは教えてくれるのだろうか。僕は畳んだシーツの椅子の上に置くと、またベッドに乗った。俯いた兄さんの髪をかきあげて瞳を見る。兄さんの目は何かを耐えるように潤んでいた。今にも零れそうな涙に、僕は慌ててその瞳にティッシュを添える。涙を吸収してティッシュがじんわりと潤った。

「兄さん、気にしないで。いつか教えてくれればいいから、ね?」
「ごめんロロ・・・本当に・・・でもお前のためなんだ・・・」
「分かったよ兄さん。もう聞かないから泣かないで」

兄さんの顔を掴んで上を向かせると僕は兄さんの瞼にキスをした。兄さんが僕のためというのなら、きっと僕のためなんだろう。僕は兄さんの言葉は疑わないよ。不安だけど、兄さんを信じられるから大丈夫だよ。兄さんはただごめんと繰り返しながら、しばらく泣いた。


手術のことなんかすっかり忘れて、一か月が経った。あれから特に変わったことはない。何か変化があったかと聞かれれば、不思議なことにギアスを発動した時に感じていた心臓の苦しさがなくなったことだ。僕のギアスは発動すると心臓が止まってしまう。失敗品の僕だから止められる時間は僕の心臓が耐えられるまで。前までは長くても5秒から8秒が限界だったけど、最近8秒を過ぎても胸が苦しくないのだ。ギアスは成長するし、もしかしたら心臓への負担が軽くなったのかもしれない。兄さんにギアスを使うなって言われてるけど、実は兄さんがいないところでたまに使ったりしている。黒の騎士団には意外とスパイが紛れ込むことが多いんだ。そういうやつらを処分するためには、やっぱりギアスは必要なのだ。きっと兄さんは僕の体のことを思って言ってくれているんだろう。心臓なんて人間の体の器官の中で重要なものだ。それを犠牲に力を使う僕のギアスは、生命の危険が高い。ギアスの使い過ぎて死ぬのは嫌、兄さんと生きていけなくっちゃうしね。でもたまに思うんだ、兄さんを守るために死ねるならいいって。


朝から雨が降っていた。嫌な天気だねと兄さんに言うと、兄さんもそうだなと言った。今日は黒の騎士団の活動は会議だけで、兄さんも最近疲れ気味だったようだから夕方には帰って来たのだ。2人で一つの傘をさして学園の正門を抜ける。もう学生たちは殆ど下校してしまったようで、雨で霞む庭にはカラフルな傘が数個咲いているだけだ。できるだけ人目につかないよう、傘を傾けて顔を隠しながら歩く。ただでさえ兄さんは人気者だから、姿を見せただけで声をかけられてしまうのだ。クラブハウスがもうすぐという時に、僕は何気なく兄さんに話しかけた。

「兄さん、大丈夫?なんだか最近顔色が悪いけど・・・」
「・・・大丈夫だよ、ちょっと疲れてるだけだから」
「本当に?顔が白いよ、ラクシャータに診てもらったほうが・・・」

そう言いかけると兄さんが足を止めた。急に止まった兄さんに、どうかしたのだろうかと顔を覗き込むと兄さんは目を伏せて口を開いた。

「なあロロ、お前、ギアス使ってるだろ?」
「えっ・・・そ、そんなことないよ」
「嘘はつかなくていいよ、分かってるんだ」

見透かすような目で兄さんが僕を見る。どうしてバレてしまったのだろう。誰かにギアスを使うところを見られていた?いや、でもちゃんと誰もいないことを確認したしそれはないはずだ。でも兄さんは僕がギアスをこっそり使っていることを知っている。使っちゃいけないって言われてたのに。どうしようと僕が黙っていると、兄さんが傘を持つ僕の手を握った。

「ロロ、頼むから・・・もうギアスは・・・」
「ごめんね、兄さん。僕、兄さんを守りたくて」
「分かってる。俺を守ろうとしてくれるのは嬉しいけど、ギアスだけは使ってほしくないんだ」
「・・・うん」
「お前にはヴィンセントがある、それに俺の隣にいてくれればそれだけいいんだ」
「・・・うん、分かったよ。嘘ついてごめんね、兄さん」

どうしてもギアスを僕に使ってほしくないらしい。兄さんが懇願するように言うものだから、僕は申し訳なくなった。バレないだろうと思っていたが、僕がギアスを使うと兄さんには分かるらしい。兄さんにこんな風に願われてしまえば、もうギアスは使わないようにしなければならない。いつも普通に使っていたギアスを使うのをやめるというのは難しそうだな。返事をした僕を、本当に大丈夫かという目で兄さんは見る。それほどまでに僕を心配してくれるのかと、僕は兄さんの心配を薄めたくて兄さんに言った。

「でもね、最近ギアスを使っても心臓が苦しくないんだよ」
「・・・そうなのか?」
「うん、今までは発動してると心臓が痛かったんだけど最近は全然痛みを感じないんだ。僕のギアスも成長してるのかな」
「・・・ロロ、あのな、実は」

兄さんがそう言い掛けた時、僕たちの真後ろでパシャンと水の撥ねる音がした。誰かの足音。振り返ると、黒い服を着た男がナイフを持って立っていた。雨に紛れて気配を消した男に、近くにくるまで気づかなかった。消された気配と手に持ったナイフ。男の服装に見覚えがあった、確か、この前始末したスパイの・・・。僕は兄さんに傘を押しつけると、兄さんを守る様に男と向き合った。言葉なくニタリと笑う男はナイフをくるくると回している。恐らくこの男の狙いは僕だろう、仲間を殺した復讐といったところか。けれど目標が僕だとしても、兄さんに危険が及ばないとは言い切れない。

「ロロッどけ!俺のギアスで・・・」

兄さんが僕の肩を掴み、目のコンタクトを外そうとする。けれど僕はコンタクトを外そうとした兄さんの手を止めた。

「いい、僕がやるよ。ねえ兄さん、時計見てて。時間を長く止められるようになったって証明してあげるよ」
「っやめろ!ギアスは使うな!」

制止しようとする兄さんを振り切って、僕はポケットに忍ばせていたナイフを取り出す。僕がナイフを取り出すと同時に男が刃を構えてこちらに走ってきた。むちゃくちゃなようで形のできているその姿勢。でも僕には関係ない。僕は兄さんの傘の下から飛び出してギアスを発動させた。

「ロロ!」

赤い光が円状に広がる。僕の名前を呼んだまま兄さんも、ナイフを持った男もピタリと動きを止めた。兄さんの、僕を呼んだ声がやけに耳の奥に残った。けれどれそれも空から落ちる大量の雨の音に薄れていってしまう。走っている途中で止めたものだから、変な姿勢で止まっている男に僕は近づく。周りに生徒がいないか心配したが、周りに傘は見えなかった。僕は男の後ろの首筋、頸動脈あたりに刃を深く差しこむと勢いよく手前に刃を滑らせた。切れ味のよい僕のナイフは難なく男の皮膚を引き裂く。途端、ぶしゅうっと男の首から血が噴き出した。噴水みたいに噴き上がる血が雨に濡れる地面に滲んでいく。何秒たっただろう?もう10秒は経ったかな。やはり心臓に痛みは感じなかった。やっぱり大丈夫だ、兄さんが心配することないんだ。血のついたナイフを仕舞い、僕はギアスの発動を止めた。兄さんに、何秒くらい止められていたのか聞こうと振り返った。


「兄さん!どれくらい止められて・・・」


どさり


兄さんが視界から消えた。いや、兄さんが地面に倒れた。兄さんの身体が地面に倒れる姿がスローモーションのように見えた。兄さんの握っていた傘が手から離れ、カシャンという音を立てて転がる。受け身を取ることなく兄さんは地面に叩きつけられた。兄さんが倒れたと同時に反対側から男の呻き声が聞こえた。けれど今はそんなこと気にしていられなかった。突然倒れた兄さんにびっくりして、急いで駆け寄る。少し雨の溜まった地面にうつ伏せに倒れている兄さんを起こす。兄さんの目は閉じていた。

「兄さん!?どうしたの!ねえ!兄さん!」

兄さんの身体を揺さぶるが、兄さんは目を開けない。一体どうしてしまったのだろう、もしかして僕が目の前の男に気を取られている隙に潜んでいた仲間に攻撃されたのだろうか。しかし兄さんの体には傷一つついておらず、血も流れていない。なんで、どうして。いくら僕が呼びかけても兄さんは返事をしない。とりあえず助けを呼ばないと。携帯を取り出そうとして、そこで僕はある恐ろしいことに気づいた。

「にい・・・さん・・・?」

息を、していない。ヒュッと喉が鳴った。

「っねえ兄さん!嘘でしょ!なんで!?どうして!?」

いつの間にか呻いていた男の声が止んでいる。ザァと雨の降る音が強くなる。雨脚が強くなって、僕と兄さんを大粒の雨が濡らす。兄さんの口元に耳を当てても、呼吸をする音が聞こえなかった。それが信じられなくて、僕は兄さんに何度も何度も呼びかけた。

「兄さん!返事してよ!ねえ!なんで息してないの!!!???」

嘘だ嘘だ兄さんが死んだなんて嘘だ信じられない信じたくないでも兄さんは息をしていない心臓だって動いてないなんでどうしてこんないきなり。どうしようもない言葉ばかりが頭に浮かんで混乱する。でもぐったりと力なく倒れる兄さんの身体が、僕に現実を残酷に突きつける。

「うそ、だよね・・・だって・・・兄さんが僕をおいて死ぬはず・・・ないよね・・・?」

まだ体温の残る兄さんの身体を抱きしめて、僕はクスクスと笑った。兄さん、息してない。心臓も、動いてない。死んじゃったの?ねえ、死んじゃったの?僕を置いて、兄さん、死んじゃったの?僕に未来をくれるんじゃなかったの?これは夢?そうだ、夢だ。だって兄さんはこんなにも綺麗なのに、死んでるはずないよね。

「にいさん」

兄さんの濡れた前髪を払うと、兄さんの頬に雨ではない雫が落ちた。それは1滴また1滴と落ち、そのうち止めどなく兄さんの頬を濡らした。兄さんの顔が歪んで見えるよ。いくら目を擦っても涙が止まらなかった。服の裾で目を押さえても、雨で水分を含んだ服は余計に僕の顔を湿らせるだけだ。目の前の出来事が信じられなくて、僕はただ呆然と涙を流しながら兄さんを抱きしめた。


「・・・やはり、逝ったのか」

不意に投げかけられた言葉に、僕は顔を上げた。そこにはC.C.が立っていて、僕と息絶えた兄さんを見下ろしていた。やはりって、どういう意味なんだろう。いや考えたくない、今は何も。僕はC.C.を見上げ、壊れた笑みで微笑んだ。

「兄さん、死んじゃった。ねえ、どうして?どうして、兄さん、死んじゃったの?」
「・・・・・・」
「教えてよC.C.・・・兄さん・・・どうして・・・」

ぼたぼたと涙を流しながら問いかける僕をC.C.は痛ましげな目で見て、静かに話し始めた。

「お前、手術しただろ。あれの意味をお前は知っているか?」

なぜ今手術の話が出るのだろう。僕は首を横に振った。もうすっかり手術のことなんて忘れていたし、意味だって未だに教えてもらっていなかった。首を振った僕を見てC.C.はため息をつくと、そうだろうなと言った。

「お前の手術は、お前の心臓にあるものを取り付けるために行ったんだ」
「僕の・・・心臓・・・」
「そうだ、いいかよく聞け」

C.C.が言葉を一旦切って、僕の目を真っ直ぐに見た。


「お前の心臓に取り付けたあるものとは、お前のギアスが発動された時に起こる代償をルルーシュに送る装置だ」


言っている意味がよく分からなかった。僕のギアスが発動したときに起こる代償?それは、もしかして。まさか、と僕が顔を強張らせるとC.C.は一度だけ頷いた。まさか、だって、ギアスが発動するときに心臓が止まるのは、僕が失敗作だからで・・・。

「違う。V.V.はお前を失敗作と言ったが、心臓が止まるということこそがお前のギアスの制約だったんだ」
「そんな・・・!」
「お前のギアスは心臓に酷い負担をかける。・・・ルルーシュは、その負担を自分の心臓へ送ったんだ。お前が苦しまないように。」
「・・・!!!」

負担を、自分の心臓へと送る?そんなことが、可能なのだろうか。兄さんの身体を抱え、心臓の部分へと手をあてた。だとしたら、僕がギアスを使うたび、兄さんの心臓は・・・。

『ロロ、もうギアスは使うな』

手術をしたあと兄さんが僕にそう言った気がする。何かあるたびに僕にギアスを使うなと言っていた兄さん。まさかその言葉の意味は、こういうことだったのだろうか。僕は身体が震えるのが分かった。ガタガタと手が震え、兄さんを抱く手に力が入る。もしかして兄さんが僕がギアスを使ったのを知っていたのも、最近顔色が悪かったのも、すべて僕のギアスのせい?

「あ・・・あ・・・!」
「本当に馬鹿なやつだよ、お前にそのことを話せばいいのに、心配させたくないからと言って黙って・・・だからこんなことになるんだ」

それだけ言うとC.C.は僕が殺した男を担ぎ上げた。処理をするのだろう、何も言わずに男を引きずって歩いて行ってしまった。僕と兄さんの二人きりになって、僕はC.C.の言葉が頭から離れなかった。兄さんは僕に負担をかけさせないように、わざと手術までさせて代償を自分の心臓へと送っていた。その事実が僕の胸に深く突き刺さる。

「う、わああああああああああああ!!!」

冷たくなった兄さんを身体を抱きながら、僕は空に向かって叫んだ。



------------------
ロロの心臓負担をルルーシュが請け負えばいい。